体内から水分が抜け、脂肪は減らず体重減少 炭水化物(糖質)を減らすと、体重は劇的に落ちる。そのことは学術的に証明され、米国の臨床栄養学の研究雑誌に掲載されている。炭水化物を抜く4日間の超低カロリーダイエット(405カロリー/1日)によって、体重が多い人の場合には4~5キロも落ちるという結果が出ている。

脳と筋肉の非常食であるグリコーゲンは、肝臓と骨格筋、脂肪細胞に3~4倍の水と糖質が結合したエネルギー源だ。人間の脳はものすごい大食漢で、1日当たり400キロカロリー、だいたい体全体の2割のエネルギーを使うが、炭水化物を摂らなければ、肝臓や筋肉にあるグリコーゲンが分解されて脳にエネルギーを供給する。

そのとき、結合する水が体内から4倍抜け、体重は減る。体の成分として水は男性で6割を占め、女性は男性より筋肉量が少ないため、水もやや少ない。水があるために、筋肉はみずみずしくて重い。1~2日間、炭水化物を摂らない女性は「体重が1~2キロ減った」「痩せた」と喜ぶが、それは体内から水が出ただけにすぎない。

ご飯のカロリーは1グラム当たり4キロカロリー、脂肪は9キロカロリー、タンパク質は4キロカロリー。ご飯は決して太る食べ物ではない。外食先で寿司を食べ、帰宅して入浴、喉が渇いて水分を摂る。するとたちまちグリコーゲンが増え、水が結合して体重が急に増える。これを経験すると、「食べ過ぎた」「ご飯を減らす」「炭水化物ダイエットを」となる。その後も、水で重くなったり軽くなったりを繰り返していく。これを米国では「ヨーヨー・ダイエット」と呼ぶ。

炭水化物の摂取量が少ないと、脳はイライラし、感情にも問題が出てくる。何となく元気がない、ヤル気が出ないという人もいる。それは脳にエネルギーが行かないため。動き回れないし、すぐに眠くなるのもそのためだ。

中年女性を対象に食事を減らして減量する臨床実験を行った。「低炭水化物・高脂肪食」と「高炭水化物・低脂肪食」のグループに分け、タンパク質の量は同じにして1年間続けた。その結果、1年後の体減少量は平均13,7キロとなり、両グループ間での有意差は認められなかった。臨床では、1カ月で約1キロの脂肪を落とすやり方が最も正しい減量法と言われ、これより早いとリバウンドしたり、筋肉が落ちたりする。

両グループ間で差が出たのは、気分障害(怒り、敵意、混乱、抑うつ、落ち込み)などの心理状態。高炭水化物・低脂肪のグループは、有意に改善するという結果が出ている。気分障害は高脂肪食で悪くなり、高炭水化物食で良くなる。

米国で4000人以上を対象に「太っている人」「そうでない人」がどれぐらい炭水化物を摂っているかを調べたデーター(論文)がある。統計的に見れば、炭水化物の1日当たりの摂取が47%以下の人が肥満症に関係していた。太っている人ほど炭水化物を食べていない。最も肥満が低かったのは、47~66%のエネルギーを炭水化物で摂っている人だった。

日本の農水省やコメの専門家も、「1日に50~65%程度のエネルギーを炭水化物で摂りましょう」と勧めている。それが世界の常識だ。

日本の農学、医学、薬学部の先生は、ラットやモルモットに炭水化物を与えた実験結果から、「余分な炭水化物は脂肪になる」と言う。しかしラットやモルモットは体の割に脳がほとんどなく、こうした実験結果は人には当てはまらない。

コメなどの炭水化物は、肝臓や筋肉でグリコーゲンという形で4倍の水と結合して重くなる。脳のために炭水化物を脂肪にはしない。仮に1000キロカロリー余分に炭水化物を食べた場合、脂肪になるのは1日10グラムまでにすぎない。

フルーツをたくさん食べると中性脂肪が増えるというが、そうであればチンパンジーは絶滅している。アフリカのチンパンジーは9割の炭水化物と1割のタンパク質を摂るが、炭水化物のほとんどがフルーツ。フルーツをそれだけ食べているが、糖尿病のチンパンジーは聞いたことがない。

「糖質を摂りすぎると糖尿病になる」「糖尿病は遺伝する」というのも間違いだ。糖尿病は最近の病気で、診断基準ができたのは昭和30年のこと。現在の糖尿病患者は、1000万人以上でその当時の44倍以上になっている。したがって遺伝ではない。
脳卒中の危険を増す朝食抜き 朝食を欠食していると、脳卒中で倒れる人が36%増える。これは大阪大学が行った実験の結果で、国際的な論文になっている。朝食の回数が週2回以下(ほとんど食べていない)の人は、毎日食べている人に比べて脳出血の危険性が高くなるという。

欠食で脳に栄養がないため、血糖値を上げて脳にエネルギーを足そうとする。すると血圧が高くなるホルモンがたくさん出てきて、血管が収縮する。体から水分もでるため、血液もネバネバ。脳や心臓血管系が原因で倒れてしまう。

糖尿病の人は朝食を摂った方が、摂らなかったときよりも昼の血糖上昇が95%少ない。朝食を欠食すると、血糖値を上げるホルモンがたくさん出る。この中には、脳のために筋肉や脂肪をエネルギーとして使わせるための遊離脂肪酸がたくさんある。筋肉は、普段は糖質を使うが、脂肪がたくさんあるときには脂肪を優先する。

昼に食べたとき、血糖値は2倍近く上がってしまう。糖尿病の人は、規則的に決められた範囲で糖質を摂ることが大切だ。日本糖尿病協会は、3大栄養素の割合を炭水化物50~60%、タンパク質20%以下、残りを脂肪とし、総エネルギーを制限しないで炭水化物だけを極端に減らすことは薦めていない。

男性4万4000人と女性8万5000人を20年間追跡し、病死の原因を調査したデーターがある。炭水化物を60%程度摂っていた人と、35%しか摂らなかった人では、摂らなかった人の死亡率が1.5倍だった。

体の中のエネルギーを計測するためには吸気ガス(酸素と二酸化炭素の濃度と容積)を分析する。炭水化物のグルコース(ブドウ糖)に6個の酸素を足すと、炭酸ガスと水に分解されてエネルギーが生まれる。炭酸ガスと水だけの炭水化物は、この世界で一番クリーンなエネルギーといえる。

つまりコメは、最も優れたクリーンなエネルギーだ。炭酸ガスは口から出て、水は汗や体内で再利用される。中性脂肪は脂がなかなか燃えず、酸素を80個も使って分解する。活性酸素もたくさん使う。

運動はたくさんの酸素を使うため、グルコース(ブドウ糖)もたくさん使う。1日座りっぱなしの人(運動しない)は炭水化物と脂肪が半分で足りるが、運動する人は60%程度の炭水化物を摂らないと足りない。

農水省のデーターなどを使い、カロリーが同じ食事を摂取した場合に、体の中でどう変化するかの実験を行った。「炭水化物60%、タンパク質15%、脂質25%」と「炭水化物25%、タンパク質15%、脂質60%」として炭水化物と脂肪を入れ替えた。そして朝・昼とご飯を食べた場合と、朝ご飯を抜いて2食分を昼に食べた場合とし、参加者の体重1キロ当たり11キロカロリーの食事になるようにコントロールした。

朝食でご飯、昼食にもご飯を食べると、満腹感が持続する。しかし同じカロリーの高脂肪食では、満腹感がこない。おやつが欲しくなる------という結果になった。高脂肪食は腹持ちが良いというのはウソで、腹持ちが良いのは炭水化物だった。

もっとも大事なのは、食べた時に体が温かくなること。人は食べたものを分解して輸送・貯蔵してエネルギーに蓄える。これを「食事誘発性熱生産」という。ご飯を食べたときが一番、食のエネルギーの無駄遣いが多くなる。欠食すると、基礎代謝のままだ。

高脂肪食は、エネルギー消費が半分にとどまる。絶食して2食分まとめて食べると、エネルギーを2倍消費すればいいが、そうはならない。ほとんどが1食ずつの場合を下回る。したがって朝食を抜くと確実にエネルギーの消費量が少なくなるため、これが最も太りやすい。これは私の論文で、平成17年の糖尿病機関紙に掲載されている。

小学生などでは、毎朝ご飯を食べる子とそうでない子では成績に差が出る。食べていない子は、脳に栄養がいかないから集中できない。お母さんが忙しくて低炭水化物の食事だと、子どもにも食べさせないため、学校で眠くなる。低血糖でイライラしてキレる子どもが多くなる。
摂り過ぎも糖尿病にならず 京都大学の女子学生110人を対象に行った調査の結果では、隠れ肥満が35人、肥満が16人となり、2人に1人は肥満だった。ふだんから炭水化物を摂っていないためだ。

隠れ肥満者・肥満者を対象として1日3食、1食400キロカロリーの和食を2週間続けた。炭水化物が6割、タンパク質が2割、脂質が2割、ミネラル・ビタミンも完全になるよう栄養士が食事を用意したものだ。その結果、全員が減量に成功した。コメを中心としたバランスの良い食事が、メタボや隠れ肥満にも有効だということを立証できた。この結果は日本肥満学会に発表している。

カルテに診断結果として糖尿病と書けるようになったのは昭和30年からで、患者を把握できたのもこのときからだ。昭和30年の患者数を1とすれば、平成15年で31倍、現在は44倍になっている。毎年、コメの消費量は減っている。これをどう説明したらいいか。

宮沢賢治は、「1日4合の玄米と味噌と少しの野菜を食べた」という。決して体の大きな人ではなかったが、明治の人は4合ものコメを食べていたが、コメを摂り過ぎても誰も糖尿になっていない。コメを摂り過ぎて糖尿になるわけではないためだ。

1日当たり糖の消費量は脳で20%、筋肉で70%、残り10%は、内臓などで消費されていることが分かっている。それでは、糖尿病はどこが違うのか。脳や内臓で使われる消費量は同じだが、筋肉の代謝が極端に落ちているためだ。

体を動かして3倍のエネルギーを使えば血糖値は3倍下がる。食後に歩けば血糖値は下がるのに、運動不足の人に糖尿病が多いのはそのためだ。大事なのは、脳と筋肉で9割のエネルギーを使っており、体を動かせば糖は消費できるようにできているということだ。

スポーツ選手は、運動前のグリコーゲンの量が多いと、持続力が上がることが分かっている。マラソン選手なども、燃料切れしないように炭水化物をたくさん摂る。米国のスポーツ医学では、炭水化物70%摂取が当たり前となっている。激しい運動をするとグリコーゲンが減るため、仮に40%しか炭水化物がなければ、不足で体調が悪くなる。
炭水化物が寿命を延ばす その長さが寿命を決めるとされる染色体のテロメア(末端粒子)は、細胞分裂によって遺伝子の末端がだんだんに短くなり、「命のロウソク」と呼ばれている。米国のデーターでは、1日20本のタバコを20年吸っている男性は、吸わない人よりテロメアが短く、4・5年短命。肥満体成人は、正常体の人よりも老化が7年間早いという。

2017年に1万人を対象にテロメアを測定した実験で食事についてみると、炭水化物をたくさん摂っている人は食物繊維や葉酸、ビタミンB6、マグネシウム、鉄分、不飽和脂肪酸がテロメアを長くし、脂肪が多い人は短いという結果に。炭水化物は寿命を長くする方に働いたデータだ。

朝ごはんをしっかり食べて元気な人生を送ろう!